イギリス人のこだわり

先日までの私は,会社でのコーヒーライフにおいてある問題を抱えていた.ミルクポーションが分離するのだ.お湯を注ぎ,スプーンでかき混ぜる.インスタントコーヒーの粉が溶解するとともに,ミルクは分離する.頑として再溶解を拒む白い粉を,それでもなるべく一様に混交せしめるべく,一口ごとにスプーンでぐるぐるとかき混ぜる.あぁ安物やからあかんねん,次はもう少し高いやつを買おう,今飲んでいるのがなくなるまでは我慢しよう,と思っていたのだった.
ところがこの問題が,ポーションの変更を待つことなく解決されたのだった.コーヒーに一様に溶け,白みを帯びた液体が出来上がる.スプーンははじめ以外 (ことによるとはじめから…かもし出せ青春) 必要ない.すばらしい.
種を明かせば単純なことで,喫コーヒーの手順を変更したのだった.旧手順はこうだ.

  1. マグカップにコーヒーの粉を入れる.
  2. ポーションを入れる.
  3. お湯を注ぎスプーンで混ぜる.

対して,新手順はこうだ.

  1. マグカップにコーヒーの粉を入れる.
  2. お湯を注ぐ.
  3. ポーションを入れスプーンで混ぜる.

1 は同じだが 2 と 3 が入れ替わっている.これで解決する理由は,おそらく新では 2 と 3 の間に微妙にお湯 (というかコーヒーというか) が冷めている,というあたりだろうがこれはあれだ.紅茶にうるさいイギリス人の,「紅茶が先かミルクが先か」 問題とほとんど同じ構造なのである.あんなものばかばかしいと思っていたが,ひょっとして合理性のある話なのではなかろうか.
いや,こだわりのあるイギリス人はポーションなんか使ってないような気がしますけれども.あとインスタントコーヒーも.そもそも,コーヒーの話と一緒にしたら怒ると思う.
ところで実はこの旧手順,「スプーンを不要にする」 という目的のためにお湯を最後に入れることにしたのだった.横着するとろくなことがない,ということかもしれない.
あと,はじめに打ち捨てられた 「安物だからである」 という説だが,実家では 「ポーション → コーヒー」 の順に注いでいるのに分離していない気がする.関係はあるのかもしれない.あちらはインスタントでないのが鍵を握っているのかもしれず,すると実家からポーションをもらってきて旧手順を試せばよいのか,しかしそれで分離すると嫌だなぁ,等と考える昼下がりなのであった.